私が子供のころ、祖母に口伝えで教わりました。「おーんあーぼーおーきゃー♪」と節つきです。
越後には古くから、「雨垂れ節」(あまだれぶし)というものがあります。光明真言にリズムと音階をつけて歌のようにお唱えするのです。その唱え方があたかも、雨の日に屋根から雨垂れが「ピチャンピチャン」と落ちてくるときのようだということで、「雨垂れ節」と名づけられました。
越後の各寺院では春と秋のお彼岸の中日に、お檀家さんがお寺に集まってご先祖様方の供養会を行います。そのとき住職を先頭に光明真言を雨垂れ節で唱えながら、本尊様の周りを3回廻ります。全国でも珍しい法要です。この音階は「博士」(はかせ)といって、仏教の楽譜でもあらわすことができますが、お檀家さんがたは、親から子へ、孫へと口伝えで教え、自然に覚えます。大概はおばあちゃんが、孫と一緒にお風呂に入りながら、教えているようです。
「夜、怖い夢をみたら、真言を七編唱えなさい。そしたらぐっすりと眠れるよ。」
「試験の前や、スポーツの試合の前などに、緊張したときは、この真言を唱えなさい。不思議に落ち着いて、自分の力を出せるよ。」などと、教えたものです。
しかし、最近は二世帯住宅などが流行り、お年寄りと孫が一緒に生活することが少なくなってきました。残念ですが、時代の流れというものでしょうか。その分僧侶が大勢の皆さんに、この光明真言の御功徳を伝えていかなければならないと思います。
真言をお唱えするときは、合掌をします。真言宗では両手の指を互い違いに組み、右手の親指が上になるようにします。金剛(こんごう)合掌といいます。そして真言は正確に発音し、間違えないように唱えます。心には、「我は仏と等同なりと感ぜよ」というのですが、少し難しいので、「仏さまを心から信仰し、尊敬します。」と思うことが大切です。
これを三密(さんみつ)の修行といいます。
三密とは身と口と意です。
身が金剛合掌、口が真言、意が信仰です。
この三つが揃うと、仏となることができるのです。「即身成仏」(そくしんじょうぶつ)です。この身このままで、仏となる。真言宗では仏になるための道筋をしっかりと示しているのです。十善戒の実践もまた、この三密の修行なのです。
心から一心にお唱えしましょう。